さんか

□キスがその答え
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一度でいいから
その瞳に私を映して下さい


**… キスがその答え


『なあ、ちょっとええ?』

『またなの?』

『堪忍。せやけど、気兼ねなしに話せるんはお前しかおらんのや』

『…わかったよ』


彼の恋人は私の親友
だから喧嘩したり、困ったことがあったりすると決まって私の元へ相談に来る

私の気を知りもせず

知られるようなことがあってはいけない
今の位置をみすみす手放すようなことはしない…出来ない

そう思っていたのに


『もう知らないよっ』

―パン…ッ!

『…っ』


あの日
親友と思い人のやり取りを垣間見た私は、動き出してしまった

戻ることの出来ない道へ
自らの身を投じる


『忍足』

『…なんや、見られとったんか。格好悪いな』

『格好悪くなんかないよ。
 私だったら…そんな思いはさせない』

『え?』

『好きだよ、ずっと好きだったの』


溢れ出る〔好き〕を止める術を知らないから、ありったけの想いを言葉に乗せてぶつける

一歩一歩近付いてくる忍足
肩に手をかけて、顔を傾ける
触れた唇は…温かかった



あの日から忍足が私に近寄ることはなくなった

直接言われた訳じゃない
だけど、キスがその答えを語っていたから

結局、一度も私を映してくれなかったね


―ありがとう、でも…ゴメンな


「キス、するくらいなら…キッパリ断ってほしかった…っ
 そうしたら、こんなに苦しい思いをしなくて済んだのにっ」


募る想いは涙と共に流れゆく





2007.09.08(Sat)

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