グリーンガーデン

□小話
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※このページは復活で雲雀さんと綱吉くんの放課後のひとコマです。



『風の唄』


「雲雀さん、何をしているんですか?」
「……別に」

放課後の学校で、帰りかけていた沢田綱吉がふと屋上を見上げると、そこに雲雀恭弥の姿があった。

風に吹かれただ腕を組み、一人佇む雲雀の姿が夕暮れの中に溶け込みそうで、気がついたら屋上への階段を駆け上がり、声をかけていた。

「君こそ何だい?」
息を切らす沢田を気にかけるでもなく、雲雀は一瞥をくれてそう答えた。
「あ、いえ……」
用事があったわけではない。ただ、風に吹かれていた雲雀が気になった、それだけなのだが、
(そんなこと言ったら……変だよな)
妙に気恥ずかしくなり、ついうつむいてしまった。

「風を……」
「……え」
少しだけ微笑んだ雲雀は、沢田からまた元の位置へと視線を戻した。

「風の唄を聴いていた」
「……風」
沢田の耳元を、夕焼け空の向こう側から吹いて来た風が通り過ぎていった。

「10代目ーっ! 何してるんですか? 早く帰りましょう」
風とは反対側から元気よく沢田を呼ぶ声に、唄はかき消された。

「ご、獄寺くん」
沢田が声の主が現われた屋上の入り口を振り返ると、雲雀がその入り口へ向かう後ろ姿が目の端に映った。

チラリと雲雀は獄寺を見たが、何も言わず入り口へと消えた。

「何かあったんですか?」
雲雀の後ろ姿をかすかに眉を寄せて見送った獄寺は、沢田に不審そうに尋ねた。
「う、ううん。何も」
焦るように、沢田は首を左右に振った。

「行こうか、獄寺くん」
一歩を踏み出した沢田に、風がまた通り抜けていった。



fin. 
 
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