グリーンガーデン

□並盛・大盛・出前一丁〜!
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「げっ! アネキ、どうしてここにっ!?」
翌日、並盛中学のテニスコートに最初に現われた客は、獄寺隼人の姉、ビアンキだった。
「あら、隼人がテニスの試合に出るって言うから来てあげたのよ」
ビアンキは大きな手荷物を楽しげに振り回すと言った。

「テ、テニス? 俺がっ?」
ビアンキの姿に、無条件に卒倒しかける身体や意識を必死に保ちながら、獄寺が目を点にした。
「違うの?」
「当たり前だろっ! テニスなんて一度もやったことないって!」
「あら、聞き間違えたのかしら」
抗議する獄寺に、変ね、と首をかしげるビアンキ。
「一体誰がそんなたわけた事を」
「ランボちゃんよ」
「あんの野郎……」
獄寺は拳を握り込むと、
「10代目、ちょっと牛野郎をシめて来ますんで失礼します」
沢田に頭を下げ、あっという間に走り去った。

「え、あ、獄寺くん!」
沢田が声を出した時には、もう並盛の校門へその姿が消え、入れ違いに青学テニス部メンバーを乗せたマイクロバスが入って来たところだった。
 
「あら、可愛い男の子達ばかりじゃない。目の保養ね」
マイクロバスから降り立った、青学テニス部メンバーを見たビアンキは、ニンマリと満面の笑みを浮かべた。



   



「ねえ、君。いい身体してるわね。ほんとに中学生?」
「え……」
妙齢の美女から不意に声をかけられた乾貞治は、わずかに冷静さをなくした。

「ああ、私は保護者よ。並盛中に弟がいるの」
「そう、ですか」
保護者という事は、その弟がテニス部員なのだろうと乾は勝手に解釈した。

「それで……」
何の用事か、と乾が尋ねる前に
「これ、あなた達の差し入れにするわ」
そう言うとビアンキは、さっき振り回した大きな手荷物を乾に差し出した。

「え……」
「弟に力出して貰おうと思って早起きして作ったのに、あの子出ないって言うんですもの。無駄になっちゃうわ」
ガッカリした様子の美女を見るのは、いかに中学生と言えども気の毒に思う。



「乾、何それ」
「美女からの差し入れだ」
「へえ……」
青学側に用意された控室に乾が顔を出すと、その手提げ袋に注目が集まった。

だが……
「うっ……」
「これはっ……」
袋から出された、差し入れと称する物体を見た青学テニス部の面々は、ひと言ずつ発しただけでその物体から後ずさった。

「ふふ……」
なぜか、一人乾がほくそ笑む。しかも逆光眼鏡がいつになく光る。

「……何かヤバいっス」
「だな。もしかすると……」
「乾と意気投合しちゃう美女がいたってこと?」
コソコソと壁際で越前リョーマと二年の桃城武、三年の菊丸英二が耳打ちする。

「ぜひデータを取らせて貰おう」
乾はノートを引っ掴むと、楽しげに控室のドアから出て行った。




「時間だ、用意はいいか?」
部長の手塚国光がドアを開けると
「ああ、行こうか」
何事もなかったかのように、不二がいつもの笑顔で椅子から立ち上がった。
「へーい」
部員達もそれに続いた。


青学メンバーが並盛のグラウンドへ入りコートへ向かうと、コートの周りにはかなりな人垣が出来ていた。

「ほら、君達どいて。青学テニス部の皆さんだ」
風紀委員長の雲雀恭弥が、並盛中生徒のざわめきを制し、道を開けた。
 
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