グリーンガーデン

□だから、ね
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『だから、ね』


「ここは一体……」
どこ? と続ける前に不二周助は、急に霧に包まれたように白くなった辺りを見回した。

「おかしいな。地図の通りに来ている……」
はずだが、と言い切る前に、乾貞治も足を止めた。

「あれ……」
「ん?」
「今、声がしなかった?」
不二がその場から振り返ると、白い靄(もや)の中の一点を見つめた。

乾も耳を澄ますと、不二のいう声がだんだんと近づいて来るのがわかった。
しかも、何やら聞き覚えがあるような……?

「サダハル! サダハ〜ル! どこ行ったアルか?」
二人が見つめる白い壁から、一人の少女が叫びながら不意に現われた。

「……誰アル?」
少女は、二人を見ると目を丸くして立ち止まった。
「あ、僕は不二周助」
「俺は乾貞治」

少女に問われ、二人も驚いたのか不自然にも名前だけを急いで名乗った。
だが、乾の言葉を聞くと、少女の表情は驚愕へと変貌した。
「さ、定春……?」
少女は乾の名前をつぶやくと、乾の周囲をぐるぐる回り、身体中をペタペタと触りまくった。
「ほんとに定春アルか! いつの間に人型になったアルか?」
「あ、いや、いつの間にも何も、俺はずっと貞治で人間をやっているが」
いささか焦るように乾は少女に言った。

「ほんとアルか? 怪しいアル」
少女は眉間に皺を寄せると乾を凝視した。
  
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