短編T

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【朝:岳羽ゆかりの部屋】





〜〜〜…♪


「……」







朝なのは分かってる

毎朝6時半に鳴る様セットした着歌が流れてるんだから

さっきのループで三回目だ


「……」


目は覚めてる
これ以上ない位覚めてる

なのに、全身は起きたがっていない

いや、起床に限った事ではないだろう

今の私は、起きる事も寝る事も望んでいない

何も望んでいない

強いて言うならベッドに横向きに転がって枕を両腕と両膝で抱き抱え丸くなったこの怠惰な姿勢で何もせず、何も考えないでいる事を望んでいる


「……」


何故か息まで潜めて




昨日


まさに昨日


彼を部屋に招き入れ、伝えたい事を伝えた





正直、内容はまるで覚えてない
自分で何を言ったか
彼が何を言ったか


ただ、その後何があったかだけ







































何よ?


言わないわよ?



「…ん…」


枕を一層強く抱きしめ体を丸め布団に潜る


昨日の事を反芻するばかり


「……」


…私達

“付き合った"って事になる…のよね?



初恋がいつだったか知らないが“許容した初恋"は初めてだろう

思えば小学生の頃はお父さんが死んじゃってからお母さんがどうなってたかなんて気付かなかったが、私自身があまりにショックで純情な男子(まぁ女子も)小学生は明らかに暗い雰囲気の私に声を掛けなかった事だろう

中学に上がり、私自身も最低限立ち直り、お母さんが色々崩れ始めるといよいよ男子共が目障りになる

厭味に聞こえるだろうが、私は中々にモテた

思春期だか発情期だかただの遊びか知らないが、女と見れば色々話したがる男共はとにかく鬱陶しかった

それでもこの頃はまだ怒鳴るなり理屈責めにすれば簡単に潰せた

高校生になると何がどうなったのか頭の悪さだけが成長した様などうしようもない馬鹿が何人もいるのである

何だってあの歳になっても知り合いでもない人間にまでちょっかいを出すのか丸で分からない

何を言い返しても面白いらしく、この歳になっては体力的にも勝ち目がない

六月の裏路上での不良への聞き込みがいい例だ

我ながら馬鹿な事をした


ただ、いつでもいるのは考慮の違いはあれ純粋に好意を持ってくれる人だ

半ば意地になって断り続けてたかも知れない

それも生きていく内に「所詮は一時の気まぐれだ」なんて考え出してか断るのも苦にならなくなった


何より、私自身に好きになって貰い続けるだけの何かがあるとも思えなかった



「……」


なら、何で“彼"ならよかったんだろう


一緒に戦ってるから?

昔話を聞いて貰ったから?

馬鹿じゃないから?

頭がいいから?

格好いいから?
































現実は唐突なものである


「って嘘ぉ!?」


後数分なら大丈夫、あと十数分なら大丈夫、と安全圏内でダラダラと考え事をしていたつもりだったのに、それが大した思い違いだったと気付いたのは突然だった

普段なら学校に着いて友達とお喋りでもしてる頃だ


「っ〜もぉ最悪…!」


速攻で顔洗って着替えて菓子パンとリップをバッグに入れてその他細々説明してる暇もない事を一気に済ませ、部屋を飛び出した
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