短編T

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【7:00】





「………」


ベッドの上の光景をぼんやり見つめる



夢を見ているのか、時々微かに動かされる睫毛

枕を擦る茶髪

そして布団の端からは透き通った、とはいかないが、十分綺麗な白い肩が覗いている



何もかも細く、小さく、華奢にできている身体


対して鏡に映るスーツに包まれた自分を見てみると、細いと言えば細いが細部の造りの無骨さは彼女とはあまりに違い過ぎる

見た目だけでなく、実際な触って確かめているのだから間違いない


女というのは、男とはまったく別の生物だ


わざと高い音を立ててレースのカーテンを上げた

冬の日の澄んだ朝陽が薄暗かった部屋に色をつける


音と光に刺激されて、それでも小さく寝返りを打つ程度


「……、朝だよ」


上になった左頬を撫でながら声をかける

瞼は、まだ上がらない


「起こさないと怒るくせに…」


頬に当てていた指を髪へと移す

暖かく柔らかい頬に対して、毛先はひんやりと冷たい


けれど窓からの朝陽が少しずつその温度を上げている


顔を起こして、陽の差す方を見つめた

真っ直ぐ突き刺さる光が目に痛い


朝は容赦無く、暗闇の夜に光を連れてくる


夜がそれを望むかどうかなんて
考えもせずに


けれど昼に生きる者は皆それを待ち望んでいる

時が経てば、また休息の為に闇が訪れる事も


(……そうなんだろ?)


直視できない白熱の太陽


それとよく似た純白の星、そこにいる筈の知人に問い掛ける


そんな事を考えながらベッドの上に視線を戻した

自分の筋張った指が華奢な彼女の顔に触れている

肌の色や体温すら明らかに違う

自分の持っていないものを全て彼女が持っているかの様に


「…よく一緒にいられるな…」


無意識の内に、そう呟いていた

微かに身体の中心が熱くなる

振り替えって見ても、出会ってから今に至るまで共生していられるのが不思議になる位、噛み合わない部分が多い

数少ない噛み合う部分に限って、互いに直視したくないものばかりである


けれどその認識はとても嬉しいものに思えて、俺は密かに心の中で満足した

彼女にあるものが自分に無いものだけならば、少なくと退屈は訪れないだろう


寝坊がちな冬の朝日もそろそろ仕事に入った様だ

けれど眠りお姫さまは、まだ目を覚まさない


眠るがいい

どうせ今日の彼女の仕事は午後からだ

それに、どの位いじめればいつまで寝ているかは長い付き合いの中で大体把握している


午前中には起きるはずだ





俺達は、相性が良い


事を願う
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