ベルフォルスト興亡記

□序章 ハジマリ
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剣劇を舞うかのように剣戟を響かせる。

普段ならその美しさに目を引かれるものもいるであろうがこの場には一組の演舞者のみ

塀に囲まれた屋敷の中庭で二人は、石畳の上を縦横無尽に駆け、一カ所に留まることを知らない。

斬り結んでは離れ、互いの隙を見つけては斬り結ぶ。

回避、攻撃、回避。

まるで何かの遊戯をしているかのように互いの攻勢が順に入れ替わる。


上段から袈裟掛けに斬りつけるのを、女は刃で受けつつ、流し、そのまま反撃に転じる。

防御でもあり攻撃に繋がるその動きは、刃こぼれを生じさせることもない達人の域。

女の太刀筋を柔と表現するならば、男は剛。

凄まじき剣圧。

銅の盾程度ならすんなりと斬り裂くであろう斬撃を矢継ぎ早に繰り出す男。

大気が震える。

斬り裂かれた空間が、まるで、時を忘れていたかのように、剣の通った後に空気のオトを響かせる。

驚愕する点は只の力任せではなく、相手の動きを先読みしての剛剣だということ。

あくまでそれは付加価値に過ぎないと言わんばかりの華麗な動きで女の動きの幅、選択肢を狭める。
一体どこにその様な細身の躯から力を出しているのだろうか。

男の斬撃を紙一重で避け続ける女。

互いの技量は同等。

勝負が決するのは一方のスタミナが尽きるとき。

そうなると女の方が劣勢。

拮抗した戦いの中、女が仕掛ける。
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