ベルフォルスト興亡記

□一章 東部鎮圧
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『…姫…姫様!聞いておられますか?』

広間にに響きわたる怒声。

「ええ、聞いていますとも。聞いた上で無視していただけだけです。」

返す声はからかいの中に親愛の情も含んだものだった。

「東部の国境沿いで反乱が起きたのですね?大方、隣国のサトゥルーヌスの差し金に違いがないでしょうが…確証がありません…反乱の規模、被害状況は?」

エレナ・ベルフォルストは落ち着いた様子で尋ねる。

「反乱は小規模、敵の大部分は野盗崩れで全体で100名ほどだと予測、民家を襲っているとの報告です。人民にも少しですが被害が出ている模様です。先行している部隊が対応に当たっています。」

近くにいる兵隊長がそれに答える。


「先行している部隊は誰の隊です。」

「シャルル将軍率いる隊150名です。」

シャルル・フリードリッヒ

自分の従兄弟の名を聞きつつエレナは思案した。

彼の実力は充分に理解しており信頼が置けるが、鎮圧の人数としては率いている人数が少なすぎる。
それ以上にまだ野盗が隠れていることも否めない。
様々な可能性を考慮した上でエレナは応じた。

「爺、出ます。この機会に東部の反乱を完全に鎮圧します。」

爺と呼ばれた人物、オルファス・ガーランドは猛烈に反対する。

『姫の御身に何かあったときに王に申し開きがつきませぬ。王子がおられぬ中では姫が第一継承者なのを御理解して頂きたい。ここは我々にお任せ下され。』

蓄えられた顎髭、所々に元々の地毛を混じらせた白髪に鋭い眼光

額に走るは横一文字の傷跡。

一目見れば歴戦の勇士だとわかる佇まい。

そんなオルファスをエレナは煽る。

「爺は私が野盗如きにやられるとでも思っているですか、それとも自分が守りきれる自信がないと?ならばご老人は隠居していることですね。」

『このオルファス・ガーランド、老いてもまだまだ現役。姫様に傷など微塵もつけさせませぬわ。』

「ならば、かまいませんね。私は出陣します。軍の準備の進行度合いは?」

「はっ、8割強終了しております。」

「爺、準備をしなさい。15分以内に。それまでに兵士の準備も完了させておきなさい。私は着替えに戻ります。」


―――乗せられた。

オルファスがそのことに気づき、引き留めようにも遅く、エレナは席を立ち上がり、ニヤリと微笑みながら自室に向かっていた。

後に残された家臣やオルファスは溜め息をつきつつ自分達のするべき仕事へと移行する。

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