ベルフォルスト興亡記
□序章 ハジマリ
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ーーー闇夜に響きわたるは一筋の剣戟
一つは常闇を斬り裂くような白銀の衣より
それを身に纏う女性の刃から鳴り響くは澄み渡るカネの音。
光を照り返すその刀はシンプルな片刃造りながら、柄には子細な装飾が施されていることから高貴な出自だと視るものに思わせる。
麗人
そう表現するのが正しいだろう。
彼女の意志の強そうな碧眼
流れる絹のような黒い長髪
そして何よりタキシードのような礼装を纏う長身痩躯が、より一層凛々しい印象を強めている。
指先のない革の手袋を填めた手が握る刃を振るう度に、彼女の腰まで伸びた長髪が宙に靡く。
一方で
もう一つのオトは、常夜に溶け入るかのような漆黒の出で立ちから響き渡る。
ひらひらとした漆黒の外套の下から覗くのは軽装の女とは逆に、要所要所に鋼が当てられた真っ黒な防具。
掲げ持った剣は徹底的に艶の消された両刃造りの剣。
それは異国の技術との融合で生み出された黒刀。
しなやかで在りながら圧倒的な強度を誇るそれは王家秘蔵の技術によってしか生み出すことの出来ないもの。
男が闇の中で唯一光を浮かばせるのは紺碧の双眸のみ。
長い髪は頭の後ろで一房に布で纏められ、動きの邪魔にならないようにしている。
ーーー優男
そんな印象が浮かぶ。
対称的な格好の二人。
例えるなら光と闇。
だがどちらが欠けても成り立たない、そんな存在。
そんな二人の特徴をあげるなら、第一に出るのが瓜二つな姿形だと言うこと。
そこから想像されるは何らかの血縁関係。
端から見ると不思議な光景が眼前に現れている。
ソックリな人物が互いに
まるで鏡を相手取っているようなのだから。