少年陰陽師(短編)
□君よ、幸せに…
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それは晴明の式から昌浩の式に変わって何度目かの夏が訪れた頃だった。
「あっつ〜い!もっくんあっち行ってて、暑苦しい」
「なんだと晴明の孫!?この愛くるしい俺様に暑苦しいとはなんたる暴言だ謝れ!」
「孫言うな!!」
こんなやり取りは日常茶飯事で、当たり前の光景だった。
だがそれが辛いと感じ始めたのはいつからだろう。
晴明がいて
彰子がいて
他の十二神将がいて
多くの苦難や喜びを分かち合った。
でもその度に痛みを感じだ。
最初はあまりに小さ過ぎて気付かなかった。でも次第にその痛みは大きくなった。
こんな痛み晴明が主のときはなかった。
昌浩が主になってから痛みが生まれた。
つまり昌浩が原因。
その原因たる昌浩を見れば、自然と笑みが溢れ胸が温かかった。
(…嗚呼、そうか)
一人納得しながら愛しいあの子を見つめる。
これが恋なんだ。
あの痛みは嫉妬で、俺は昌浩に近付くすべてのものに妬いていたんだ。
好きだから、愛してるからあの子が欲しい。
(晴明。俺はあの子が好きだ)
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