少年陰陽師(短編)
□泣かないで
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邸に帰りつくと俺たちを待っていたのか祖父さまと天一、白虎がいた。
「祖父さま!青龍が、青龍が!!」
俺は祖父さまにしがみつき、早く治してと訴えた。
「わかっておる。白虎、宵藍を儂の部屋へ。天一は昌浩の怪我を診てやっておくれ。紅蓮には詳しい話を聞こうかの」
「ああ」
「わかりました」
そう言って祖父さまは青龍を連れて行った。
「さあ、昌浩様こちらへ」
天一は俺を促すが俺は首を振って拒否した。
「昌浩様?」
「大丈夫。俺はどこも怪我なんかして…」
言いかけて涙が出た。
俺は怪我もしなければ呪詛もかからなかった。
どちらも俺の代わりに青龍がしたから。
俺が弱いばっかりに…!
「昌浩様…」
「ゴメン。今は一人して」
とぼとぼと天一を置いて俺は自分の部屋に戻るとずるずるとその場に崩れ落ちた。すると
「な、くな…」
声が聞こえたと思ったら辛そうな顔をした青龍がいた。
「青龍!?どうして…早く祖父さまの部屋に‥」
「ぅるさ…貴様、が泣いて…から」
俺が泣いてたから…?
だから来てくれたの?
俺が悪いのに…
「馬鹿、が…自惚れ、るな…これは俺が避け、きれなか…だけだ…」
苦しそうにしながら青龍は俺が悪くないと言う。
乱暴な言い方だけど不器用で優しい青龍に俺は違う意味で涙が出た。
「青龍…」
ギュッと青龍に抱き付いて、心音を感じだ。
「まったく無茶しおって」
時期を見計らったように祖父さまともっくんが現われた。
「祖父さま青龍が!」
「わかっておるよ」
祖父さまはそう言って青龍の側に座り、真言を唱え手を打った。
「これでもう大丈夫じゃ。しばらく寝かせておけば体の色も戻るであろう」
にこりと笑みを浮かべて俺の頭を撫でた後、一言も喋らないもっくんを促して俺の部屋から去って行った。
「紅蓮」
「わかっている」
凍てつくように冷えた瞳と夕焼け色の瞳が交わされていたのをその時の俺たちは知らない。
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