少年陰陽師(短編)
□月に君を想う
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▼六合×昌浩(平安時代)
秋も終わり、冬が訪れた頃の話。
誰もが眠る丑三つ時に俺は満月を眺めていた。
キラキラと輝く月は綺麗で、吸い込まれそうなほど見つめていた。
「そんな薄着で外へ出ては風邪をひくぞ」
「六合」
単衣だけの姿に六合は自分が着ていたマントを脱いで俺に着せた。
「ありがとう。六合は寒くない?」
そう尋ねると頷いて返事をした。
「あ、もっくんには内緒にしてね?うるさいからさ」
苦笑しながら言えばまた頷いた。
静寂な夜に心地よい沈黙。
月を見ながら想うのは隣りに立つ神将のこと。
表情があまり変わらないから何を考えているかわからなくてやきもきすることはざらで。
口数も少ないから読みにくい。
でも伝わるものがある。
優しくて穏やかで、誰よりも情が深い神将。だから好きなんだ。
「ねぇ、六合」
名前を呼ぶと視線が絡み、その瞳に俺が映る。
「好きだよ」
微笑みながら伝えた気持ちを六合は目許を和ませ、俺の顎に手を当て上を向かせて口付けをした。
甘く蕩けそうな接吻に俺は力が抜け、六合に寄り掛かった。
「俺も好きだ」
満月の光に照らされ、俺たちはもう一番唇を重ねた。
2009.11.4
2010.3.13