10/22の日記

00:06
秘夜…樫原さんとワルツ
---------------
どうしようか迷いましたが、今日もドレスを着ました。


ダンスパーティーが終わって、屋敷に戻った後、義兄さんにお嬢さんの様子を報告する樫原さん。

義兄さんは、たいへんご満悦の様子だ。
樫原さんも、美しいご令嬢ぶりを思い出して、心から微笑んでいる。

ぼくは今度、家で一緒に踊ってもらおうっと。

そんなふうに、笑顔で言う慎一郎義兄さん。
その無邪気な笑顔が、懐かしく感じて……なにか、ひっかかる樫原さん。


義兄さんは、表情を引き締めて話題を変える。
それは、樫原さんにとっては唐突で、対処に困る言葉だった。

「ぼくが侑人離れをするのと同時に、おまえもぼくから離れる潮時なんじゃないかと思うんだ」

……どうやら義兄さんは、お嬢さんのこれからに期待していて、樫原さんにはそこにいて、お嬢さんを支えてほしいらしい。

樫原さんは絶句している。
義兄さんはさらに続ける。


「本当のことを言うとね、きみに、みつこちゃんのすべてを任せたい気持ちすらあるんだよ」


きみ――。おまえとか侑人とかでなく、きみ。
そう、対等に呼ばれた樫原さんは、軽い衝撃を覚える。



一方、お嬢さんは部屋にいて、まだ、ドレスを脱がない。部屋に、なにげなくショパンを流して、パーティーのことを思い出す。

結局、樫原さんとは踊れなかった。
誰と踊っていようとも、心はすべて樫原さんに向かっていた。

長い溜息を吐いて、自分の気持ちをかみしめる。


樫原さんに……恋人になってほしい。
樫原さんが、好き。



そこへ、ノックの音がして、こちらも重大な気持ちを秘めた樫原さんが現れた。

まだドレスを脱がないお嬢さんを見て、少し驚いたような顔をする。

「どうしても、そうしたくなかったんです」

「は……?何か、理由があるのですか」

お嬢さんは、自分と、ワルツを踊れという命令を下す。

樫原さんは息をのむが、一曲だけ、踊らせていただきます。と、お嬢さんの手を取る。

美しいスチル、ゲットです。

あなたはずるい方になった、そんな戯れに、樫原さんが教えてくれたのだなどと切り返しながらも、手は震える。

こんなに体温が伝わってくるほど近くにいたことは、あの、水たまりの一件のとき以来だった。


「ねえ、樫原さん。……あたしは少しは大人になりましたか?」

「少しどころではありませんよ。もう充分にレディです」

そして――。
お嬢さんは、今こそ、自分の気持ちを樫原さんに伝えるのだ。

「樫原さん」

「はい」

「……好きです。あなたが、好き」

「……」

「大好き、です」

言えた。
樫原さんのステップが、一瞬、止まりそうになる。
でも、すぐにワルツのステップを踏み始める。

「……みつこお嬢さま」

「はい」

「奇遇ですね。実は私も――同じことを申し上げようと思っておりました。」


わー(笑)
お嬢さんは、完全に固まってしまった。

「お嬢さま。右からです」

なんと冷静な(笑)
お嬢さんは、なんとかワルツの流れに乗りながら、樫原さんの気持ちを確認する。

「あなたが――みつこお嬢さまが……好きです」

曲が終わって、ダンスを誉められた。
樫原さんの胸に飛び込むお嬢さん。

「お嬢さま……」

「お嬢さまじゃ、なくて、恋人……よね?」

「そうだったね。今日からぼくは、きみの恋人だよ。みつこちゃん。いや、みつこの方が、いいか」

くらくらする(笑)

「じゃあ、みつこ。ぼくのことも呼び方を変えてもらおうかな」

なに?なになに?
ご主人さま?大首領?それとも……

「名前で呼んで」

甘い命令をしてくる樫原さんに、お嬢さんは逆らえない。

「……侑人、さん」

真っ赤になりながら、呼んでみる。
樫原さんは、うん、その方がいい、と微笑む。

そして、あっという間に抱き寄せられて。
当たり前のようにキスされているお嬢さん。

「きみは本当にきれいだ。その服も、すごく似合ってる。見ていて、嬉しくなるよ」

きゃー、侑人さーん(笑)!!


つづく。

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ