短編2

□きっと恋なのだろう
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──人を殺すのは怖いか。

聞けば、あんたは酷く怪訝な顔を見せた。ウチはその感情を隠さないあんたの性分が好きだ。

──ウチは生身で殺さないから。

言えば、ああと声を上げて、それから何を今更と続けた。
頭に2発、心臓に2発。ただ速やかに鉛玉を撃ち込むだけ。ただの仕事だ。そこに感情なんか生まれない。
あんたはそう言った。

──じゃあ、死ぬのは?

あんたは言葉と裏腹に穏やかに笑った。

──怖いよ。痛いのも嫌だけど、何も感じられなくなるのはとても怖い。
殺すのはなんともない癖に勝手だね。

ウチはあんたのその少し俯いた顔が好きだ。
栗色の髪が好きだ。
長い睫毛も、尖らせた口元も、桃色の頬も、白い肌も。全部がウチの気に入り。
触れたいと思うし、だけど、触れてしまうのも何故だか恐ろしくて側に居るだけでも十分だとも思う。
もし誰かがそういう感情を恋心だと言うのなら、ウチはきっと否定はしない。

──スパナ。この飴頂戴。

──ちょっともう、聞いてよ!

──なに笑ってんの?変なスパナ。

──ねぇ、スパナ。あたしが死んだら…。

日本人のあんたは骨だけになることを望んだ。
あんたは小柄だったけど、それにしても、こんな小さな容器にこんなに小さくまとめられるなんて。なんだか可笑しい。
布に包まれた木箱を受け取ってウチは帰路につく。
すぐにでも仕事に戻らなければ。ウチは忙しい。モスカの整備だってあるし、正一に報告書を出さなきゃいけない。あと、あとは…。
急ごうと思ったのに、足は遅々として進まない。
…これが、この軽いのがあんた?こんなものなんの意味があるんだ。
日本人は馬鹿なのか?ウチは、ウチはこんなの…。

「…っ」

瞳から液体が零れ落ちた。
後から後からハラハラ落ちた。
ウチはあんたが好きだ。
だけど、抱きしめるのはただの固い箱でウチはやるせなくなった。




















[2009.8.6]


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