短編2
□戦う青年
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カチャカチャ。
目覚めるとスパナの背中が見えた。
「…」
いつも通り機械いじりをしているが、その背中越しにも違和感を感じる。
「…スパナ機嫌悪い?」
「…別に」
舌で飴を転がしながら答えるスパナはやっぱり変だ。いつもと違う。言葉に刺がある。
あたしは昼寝していただけだ。昼寝する前はいつも通りだったように思う。ならば、この小一時間の間に何かあったということだ。
普段なら爆睡したってスパナは怒りやしない。
…まさか、物凄い寝相でスパナの邪魔をしたとか?有り得なくはない。
温厚…というか、全てのことにこだわりのないスパナだけれど、機械に関することだけは別。
「ス、スパナ、あの、その、わざとではないの。寝相が悪くてごめん」
「…寝相は…。別にアンタが悪いわけじゃない。ウチの問題」
「え?」
「…いや、やっぱりアンタも悪いか」
わかんない。全然なに言ってるかわかんない。
「これ」
「ぶっ…」
「着て」
頭から白いパーカーを被せられる。少し油臭い。
スパナのニオイ、だ。
「え、ヤダ。暑いじゃん」
「…着て、お願いだから」
「…」
「目の毒」
…?なに?どういうこと?
「忘れないで。ウチも一応男だ」
「…」
どうやら、このキャミソールとホットパンツという格好がお気に召さなかったらしい。
戦う青年
(気に入らない訳じゃないけど…)
(じゃあ、いいじゃん)
(駄目。…ウチの理性が)
(え?なに?ぼそぼそ喋らないでよ。聞こえない)
(…)
[2009.5.6]