本棚・弐
□酷花
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日も大分落ちて夕闇に染まりゆく空。
今頃、ケロロたちは縁日ではしゃいでいることだろう。
冷えすぎた空気にクルルは身震いして体を起こす。
冷房を止めたリモコンを掴む指に睦実の指先が触れた。
ソファの背凭れごしに睦実がクルルの首に顔を寄せる。
ぎゅう、と押し付けられる熱にクルルは外気を思い浮かべた。
「あっちぃ…」
「クルルさ、」
こくりと一度唾を飲み下し、口を開く。
「かえ」
ドオォォン!!
静寂と声を押し退けて、まばゆい光と大音量が窓の外を彩る。
「……」
二人が驚いて顔を上げるとキラキラと尾を引く数え切れないカケラ。
更に連続して二、三発上がる、音が窓硝子を微かに揺らした。
「クックック…運悪ぃな、お前」
「…クルルは悪運強いね」
大きく溜息をついた睦実はソファの背凭れを大きく跨いで、クルルの左に陣取る。
「…で、何だい?」
「いいよもう。」
派手に光を撒き散らしては刹那に散り行く。
二人して、めくるめく色に染められてしばし口を閉ざす。
指先だけが相手に触れていた。
花火が終わるまで気付かない振りで、指も離さないで、君は此処に居た。
→後書