本棚・弐
□酷花
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「恥ずかしいからって言い訳かい?そんな623も恥ずかしいから安心しなぁ〜」
「うぅわホント嫌な奴。クルル殴ってもいい?」
「…何だよ、623の顔が見たくなったから来てやったんだぜぇ」
「…それって、」
「嫌がる顔が」
「だと思ったよ」
睦実の切り返しに、クルルが不満げに目を細めた。
「チッ、ぬか喜びの一つでもしてくれりゃ可愛いのに」
「…や、クルルが俺を鍛えてるんだけど?
っていうかその恰好どうしたの?」
やれやれと言った様子で首を振って、睦実はようやく気にかかっていたクルルの姿を問う。
「あ?日向秋に無理矢理着付けられたんだよ。そそる?」
浴衣の裾をすらりと割って含み笑うクルルに思わず顔を顰める。
「…クルルさあ、」
不機嫌な溜息を零して白い太股を覗かせた裾を直してやる。
「俺も子供じゃないし、そんな安い挑発に乗せられないから」
「……チッ、マジになんなよ」
「マジになんないようにしてるこっちの身にもなろうよ」
「………なってもいいんだぜェ?」
言葉遊びのように吐き出されるその台詞は、静かに睦実の理性を土台から削り取ろうとする。