本棚・弐
□夏は夜。
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…もしや、と思いガルルが振り向こうとした瞬間、衝撃に体が前のめりになった。
「っな!?」
「ゴキが出やがったんだ!退治任せたぜェ!」
ガタン。
クルルに突き飛ばされて体勢を立て直す前に、いつになく必死な声と共に閉められた扉。
ガルルが呆気に取られて固まっていると、黒い影が視界の隅を過ぎった。
『…クルル、もう大丈夫だ』
早くも聞こえた報せにクルルが安堵の溜息を漏らし、厳重に内から開けられないようにしてやったセキュリティをスイッチ一つで解除する。
しかしケロン軍最高精度スナイパーの名は伊達じゃない……、寧ろ早過ぎやしねぇか。
感心しながら扉を開くと同時、腕を掴まれて思考が遮られた。
「くっ…!?」
中に引っ張り込まれて、クルルの表情が一気に曇った。
モニター中央に、触角を揺らす黒い影。
「………〜ってめぇ、ガルル!」
「クルルこそっ…!人に任せっきり、は流石にないだろう…?」
ソレを注視したままのガルルの横顔は引き攣っていた。
急いで声のトーンを抑えてみても、柄にもなく焦って吐き出された言葉は否応なしにクルルに理解された。
「アンタ、も…虫ダメか」