本棚・弐
□夏は夜。
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長期任務が終わり、報告やレポートのまとめを終え、明日から久々の休暇。
しかし、そこに飛び込んだのは、地球からの緊急通信。
夏は夜。
『ガルル…っ助……』
ガルルは目を見張った。
勝手に開いたモニターはクルルの呻くような救援要請と真っ暗な映像を一瞬伝えただけで途絶える。
すっかり気の緩んでいたガルルは暗い深夜の自室で、幻聴のような声を呑み込んだ。
地球も深夜であった。
寝静まる地球人、侵略者らに違和感を感じながら、クルルズラボへ駆け付けると、閉めきった扉の前に体を丸める痩躯。
「……クルル!」
疲れきった顔を上げてこちらを見たクルルは、泣き出しそうに表情を歪めた。
「一体何が…」
言い終わる前に抱き着かれて、言葉が途切れる。
こんなに切迫したようなクルルを見たことなど終ぞない。
状況の見えない異常事態、警鐘が脳内に鳴り響く。
怯えた視線はラボの扉を見ていた。
ガルルは腰のホルスターから取り出した小銃を構えて、重く沈黙を纏う扉に近付く。
ぐ、と手に力を込めて扉を細く開けると、クルルが何かを手渡してきた。
「……殺…虫剤?」