本棚・弐

□みどりの温度
2ページ/4ページ

「なあに、我輩の腕枕を待ってたなら早く言」

「いらね」

パアアァ…と表情を輝かす直前で、一言がケロロを葬った。

ケロロがあまりに肩を落とすものだから、クルルは一つ鼻で息をつく。

「緑を見てた。」

「……げろ?」

「眼が疲れた時は緑を見ると良いって聞いてなァ」

「…はあ。どうでありましたか?」

「たいちょーだったぜェ」

ぼさりとベッドに倒れてマットレスに沈むクルル。

何食わぬ顔でその隣にケロロも寝転んだが、予想された反撃は無かった。
そのかわり、

「!」

「あぁ、アンタは見ててもつまんねぇ」

するりと触れた指先が前髪の緑を絡めとる。

「は…はへ?」

微睡みに細まるクルルの目許にケロロの胸が騒ぐ。

「くっくっ、アンタは叩いてこそだ」

「い゛っ!」

くん、と引っ張られた衝撃に思わず声を上げた、ケロロの鼻を吐息が掠める。

痛みに閉じた瞼をゆっくりと上げると目の前に、淡い紅色の薄い唇があった。

「…たいちょう…」

その唇から視線を外せなくて、ケロロが息を飲む。

口角が緩やかに上がっていく様がいやに艶を含んで見えるのは、クルルの毒を孕んだ性格故だろうか。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ