本棚・弐
□みどりの温度
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「なあに、我輩の腕枕を待ってたなら早く言」
「いらね」
パアアァ…と表情を輝かす直前で、一言がケロロを葬った。
ケロロがあまりに肩を落とすものだから、クルルは一つ鼻で息をつく。
「緑を見てた。」
「……げろ?」
「眼が疲れた時は緑を見ると良いって聞いてなァ」
「…はあ。どうでありましたか?」
「たいちょーだったぜェ」
ぼさりとベッドに倒れてマットレスに沈むクルル。
何食わぬ顔でその隣にケロロも寝転んだが、予想された反撃は無かった。
そのかわり、
「!」
「あぁ、アンタは見ててもつまんねぇ」
するりと触れた指先が前髪の緑を絡めとる。
「は…はへ?」
微睡みに細まるクルルの目許にケロロの胸が騒ぐ。
「くっくっ、アンタは叩いてこそだ」
「い゛っ!」
くん、と引っ張られた衝撃に思わず声を上げた、ケロロの鼻を吐息が掠める。
痛みに閉じた瞼をゆっくりと上げると目の前に、淡い紅色の薄い唇があった。
「…たいちょう…」
その唇から視線を外せなくて、ケロロが息を飲む。
口角が緩やかに上がっていく様がいやに艶を含んで見えるのは、クルルの毒を孕んだ性格故だろうか。