本棚・弐
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広大な宇宙の一角に、人々に捨てられた星が在る。
その星に、息づく、命たちが在る。
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「報告致します。
調査の結果、やはり例の星ではある筈のない固体数の増加と共に、各星調査団や観光者の被害報告が増加しているようです。」
「ふむ…あの噂は、事実か。」
「ええ。…しかし彼処は宇宙条約的には不可侵な為、我々は下手に制圧も駆除もする訳には」
「ふ、物騒なこと口にするものでないよ。戦闘にはしないさ。
良い。私が独りで行こう。」
「……お一人、ですか」
「おや、心配など心外だね。
赤子の手を捻るようなものじゃないか、…文字通りね」
席を立つとその男は仰々しいマントを脱いで、笑ってみせる。
「柄にもなく気が逸る…明日には行きたい。予定の調整は任せたよ」
「しかし、二月後まで一分の暇もないスケジュールが……また、無茶を仰います」
「信頼故だよ、頼めるね」
「…畏まりました。」
「さて、鬼が出るか蛇が出るか…"クイーン・ビー"とは何者か…。愉しみだね」
「ええ。大佐殿。」
彼は年齢よりも若干若く見える涼しい目で、補佐官を見遣って軽く頭を傾げた。