本棚・弐

□極彩虚偽少年
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厚いガラスの奥で泣き出しそうな上目使い、口を開いて舌を見せてくる無防備さに眩暈がする。

「っ、……特に、そんなことは」

「そんな…っ、もっとよく、確かめて下さい…」

クルルが間を詰めてガルルの両頬に手を添えた。

「…な!?」

『クルル、遊びが過ぎる。』

唇にお互いの吐息が触れ合う距離、制止してくれたのは聞き覚えのある声。
ガルルは我が耳を疑った。

「……っ大、」

「たぁ〜いさ〜?
邪魔すんなよ、イイトコなのに」

クルルの声が被る。

大佐、

有り得ないこの状況に体が硬直する。

『クルル、訓練に戻りなさい。』

「…くっくっ!了〜解。」

顔が離れる寸前。
間近でクルルの赤瞳が、ガルルの金瞳を艶やかに嘗めた。

クルルが振り返りもせずに戻って行き、ガルルは苦虫を噛み潰したような表情。

『すまなかったね、ガルル准尉』

「いえ。…大佐、彼は?」

『最近拾ってきたなかなかに優秀な人材だが…、手癖が悪い。…気に入ったのかね?』

「ご冗談を」

高まる当惑を悟られまいと薄く笑った。

黄色の流暢な共鳴が廊下に漏れて、ガルルと大佐はやはり、と漏らした。



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