本棚・弐
□極彩虚偽少年
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自分の新兵時代を思えば、こういう輩はやはり居た。秀才ぶって、或いは悪ぶって注目を集めたい子供気質が抜けない者。
周囲の新兵達が息を飲んで緊張しながら様子を見る。
やる気のない一人の為に、真面目に励む皆の時間を割かせるのは良くない。
「来なさい。」
クルル新兵を部屋の外に連れ出しながら、とても不安そうな指導員に訓練を続けるよう合図する。
廊下へ出ると、クルルの様子は一変した。
おどおどと視線を彷徨わせて先程の不遜なイメージは何処へやらだ。
「何故、共鳴しない?」
「…恥ずかしいんスけど、発音が悪くて苦手で…」
…成程、思えば指導員が注意しなかったのは彼を理解していたからかもしれない。
「やってみなさい」
「…」
「ほら、クルクル」
「く…、クルクル」
「続けて」
「クルクルクゥクルクゥク…」
噛んだ直後から語尾は消え行き、真っ赤な顔を隠すように口を押さえるクルル新兵。
…不覚にも、可愛い、などと浮かんでしまった。
確かに綺麗な顔の少年ではあるが職務中に、弟より年下の、まして男に対して何を考えているんだ私は。
「あの…、俺、舌とか短いんですか?」