本棚・弐
□侵略者のお仕事
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「ほう、くるる君。いや、響きがいい。…急で大変申し訳ないけれど、お願い出来るかな?」
「………」
いつもなら間髪空けずに接ぐ否定が出ない。
「…クルちゃん…。…無理に連れて来ちゃったもの、やっぱり…」
「別に、」
頼まれたら断れない、なんてキャラは似合わないし実際そうじゃねェのも自分が一番分かっているが…、
「別に、暇、だしなァ…」
認めたくねェことに、逆らえない人種がいるのは事実だ。
「良かったー!クルちゃんありがとっ!
じゃあ私も仕事戻るけど、頑張ってね?」
終わったら迎えに来るから、と付け足し、マスターに小さく頭を下げて秋は小走りに店を出て行った。
「…日向秋と、どういう関係なんスか」
「なあに、元編集長が老後の道楽で立ち上げた、寂れた喫茶店を気にかけてくれるいい子でね。」
クルルが尋ねると、マスターは柔らかな物腰で開店の準備を整えながら話した。
「チッ、自分から仕事増やしてどうすんだって〜の。
…で、俺は何すりゃいいんだい?」
「はは、性分てのは辛いんだろうね。
くるる君は、接客だけでいい。」