本棚・弐
□侵略者のお仕事
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クルちゃんに、お手伝いをお願いしたいの。
そう用件だけ言われて、連れ出されたのは…。
侵略者のお仕事
「おい、秋…。何でこの俺がいきなりこんな所のスタッフしなきゃなんねぇんだい?」
文句を言いながらもギャルソン風の黒の衣装を纏ってスタッフルームから出てくるクルル。
バイクの後ろに乗せられ二十分、連れて来られたのは落ち着いた雰囲気のアンティークな喫茶店だった。
「あらヤダ、クルちゃん似合うじゃなーい!」
秋はぎゅっ、と抱きしめて頭を撫でる。
子供扱いに小さく舌打ちすると「すぐに怒んないの」と頬をつつかれた。
「その子かい?秋ちゃん」
カウンターの奥から顔を出した細身の初老の男性、彼がマスターらしい。
穏やかな表情が性格を物語る。
「そ!ちょっとひねくれてるけど物覚えは良いし器用だし。いつも不健康な生活してるから使ってあげてちょうだい」
「すまないね、秋ちゃん。事故でいつもの子が入院してしまって…ところで君、お名前は?」
皺の寄った手に手を包まれてにっこり微笑まれる。
「ク、クルル…」
あぁヤべェ、この雰囲気は苦手なタイプだ。名前なんか教えた暁には。