本棚・弐
□星の瞬きも露と消え
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クルルは苔むした大木の幹に手を当て、その様子を伺う。
手元に呼び出した小型のPCにデータを素早く打ち、画像を取り込む。
幾本かのコードが機器に繋がる小瓶に木の皮を爪で剥がして放る。
ーピピッ
「樹齢、八百年…。」
「何だと?ずいぶんと若造のくせにでかいな!図々しいぞ貴様ァ!」
ヒーローが敵に宣戦布告をするように、ビッとそれを指差す556。
「確かに、俺らから見たら地球の寿命は何もかも短えんだよなあ…」
それでも堂々と聳える木々は自らを覆い、見下ろす。
「……地球じゃ、俺らの命は相当分不相応なんだぜェ」
クルルは右手を闇の迫る夕暮れ空に翳す。
「何だって!?」
556が人間を思わせない早さで首だけをこちらに向けた。
クルルは構わず手を凝視する。
「地球には解りやすい規格があるみてぇでなぁ…。
でかけりゃでかい程長く、小さけりゃ小せぇ程短く。
命は、尽きる。」
本来の姿より一回りも二回りも大きいこの地球人の姿でさえ、殊更に期限が短すぎる。
それが正しい姿である、とでも言いたげな程に地球の常識だ。
小さい者には分相応の。
…そう主張したいのはもしや、俺か。