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□エゴの名の下に
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クルルは息を飲んだ。

真摯な銀蒼色の目に、二の句が継げない。
ただ、悔しかった。


こめかみを伝う冷汗を、ドロロの指が拭う。

彼が上からどいた時には、もういつもの優しい笑顔に戻っていた。

クルルは、仰向けのまま動かない。右腕で目元を覆った。


「ケロンに居た頃、」

クルルが、呟いた。

「アンタの噂は、よく聞いてた。
若くしてアサシンのトップ。戦争となれば、先陣を斬って、風となる。
必要とあらば、単独で敵陣のド真ん中に乗り込み、勝利を呼び込む。」


ドロロは少し驚いたように、倒れたままのクルルを見詰めた。


彼が、自分を知っていた?


「軍の勝敗なんざ興味はなかったが、

そんな、強いアンタが、
カッコイイとか思ってた。」


初めて、聞く。

自分のことなんか彼は眼中に無いのだと、ずっと思っていた。


ーああ、そうか。

「…ごめんね。」


僕は、彼の『憧れ』を挫いてしまったのだ。


クルルは、何も言わない。

「……でも、これだけは譲れないんだ。」


クルルがやっと上体を起き上がらせて、ドロロを見遣る。


「知ってる。
……だから、アンタは苦手だぜぇ。」
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