本棚・弐

□クライスト・サージェント
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男は少し驚いた眼をして、しかし語る。

「息子と、…娘が居るが、妻…に任せ…。
私、は元より…我が軍、我…が星の為、に死ぬ覚悟は出来て…いる…」

「…へぇ。…いやあ…それはそれはお見事な生き様でありますな。
で、…すんげー、馬鹿らしい!!」

ケロロの強烈な蹴りが男の顎を歪ませる。
抵抗出来る力はもとより残っていなかった為、男が吹っ飛んだ。
奥歯が二、三本折れて、顎が外れた。

「ダメでありますなぁ〜?
命は大切な唯一無二のものだって自覚しなきゃ、ねえ?」

どす黒い瞳に星は濁る。
そこに敵である男は映っていない。

ケロロの瞼の裏に浮かぶのは、ある時知ってしまった己の秘密であった。
薄暗い研究室、並ぶ仄明るいカプセル。

唯一無二でなければいけない筈の自分の命、その代替品が、そこには幾つも用意されていた。

思い出しただけで吐き気がする、ケロロにとっては身の毛のよだつ記憶だ。

わざとらしい溜息をついて、男の髪を引っ掴み顔を上げさせる。

「イイこと教えたげる。」

「…っが…はぁ!!」

「我輩はね、特別なんでありますよ。
不死身なの。」

「っ!…んな、はなひ…が…」
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