本棚・弐

□向日葵、咲く憂鬱
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じっと刺すような視線はドロロへと向いていた。

「え?」

「その眼のアンタ知ってるぜェ…」

「……っ」

思わずドロロは自分の目を覆う。

そう、あちらに居た時の、水銀のような鈍い輝きを秘めた。

「そう簡単にゃ抜けねえっスよ、あそこは、えげつないから」

力無く笑う口許に反してさも愉しそうに歪められるクルルの瞳。

武力に依る侵略・征圧行為が宇宙的に流行らなくなってきたとは言え、力は純然たる侵略国家のケロンに於いて必要不可欠だ。
守る為の力は篤い志と共に前面で牽制を。

壊す為の鋭利な英才教育は、影へ。

「ー……っ」

フラッシュバックのように訓練所と戦場の地獄じみた光景が眼の裏を過ぎる。

「アンタさ、似合ってねェんだよなぁ。
壊したものも、壊されちまったものも、もうとっくに失くなってることくらい分かんだろ。」

…壊したもの、僕が。
壊されたもの…、僕の、中の…?

顔を上げる。
眩しい黄色の向日葵が人工の光と風に身を委ねながら己を見ている。

背筋が粟立つようであった。

「ぁ…、ぼ、くは…」

指先が熱くなって、筋肉が疼くような感覚。
そう、忘れられるものか。
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