本棚・弐

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しかし、その手がすぐに止まる。

ガルルの手がクルルの肩を掴んでいた。
痛くて、少しだけ眉根が寄る。

「…勿体ねェよなあ?
アンタみたいな超イイ男、大体の女なら断る筈がないのに」

「何の話だ?」

「リアルの話だぜぇ〜。
それが、こんな性格悪いのに現つを抜かして後世に遺伝子を遺そうともしない。
あーあ勿体ないオバケだって出ちまうよなぁ?」

やれやれと言うように首を振るクルル。
ガルルの表情に影がさした。

「それは、何のつもりで言っているのか理解しかねるな。」

「何で?アンタ頭の回転悪くねェくせにめんどくせぇよ」

ガルルの手に力が篭って、椅子ごとクルルを振り向かせた。

「…、…。
……何て顔してんだよ、アンタは」

至近距離で影になるガルルの表情は、苦虫を噛み潰したように堅い。
怒りに震えているようでもある。

「………そう言う、クルルこそ。」

少々間を置いてガルルが呟くように言った。

クルルが怯えているように見えた。
不遜な眼の裏に押し殺された何かしらの感情があるように思えた。

そうでなかったら、震える指先の説明をどうつけよう。
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