本棚・弐

□極彩虚偽少年
1ページ/4ページ

新入隊員の訓練に立ち会うことになった。
尉官に就いて、二ヶ月目の出来事。


極彩虚偽少年


新兵の指導員が軍部施設の一室にガルルを案内して、きびきびとした声を上げた。

「ガルル准尉殿、お忙しい中足を運んで頂き、誠に有り難く存じます…っ!」

「出迎えご苦労。
ケロンの未来を担う若者の育成・教育、日頃の努力お察しする。
本日は是非その成果を見せて頂きたいものだ。」

「いやいや、今年はまた優秀な粒ぞろいでして…。
共鳴用意!始めっ!!」

室内にわっと声が溢れ返った。男女問わず新兵独特の若々しい声が張り上げられる。

皆が緊張の面持ちで姿勢よく共鳴する中で、特に際立ってイレギュラーな黄が目に着いた。
猫背で口元に手を当て、口は動くが声は聞こえない。

ガルルは眉根を寄せ、その者へと歩み寄った。

「君、名は?
…共鳴を何と心得る?」

「…は、クルル新兵ッス。
共鳴は運命共同体である有志との連帯感を高め、士気を向上させると共に自らの精神を集中させる行為であり、それは他種族にはない、ケロン軍人の嗜みであり礎であります。」

「…完璧だ。しかし、ならば何故それを実行しないのだね?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ