本棚・弐

□深雪御伽
1ページ/7ページ

天候を制御された母星では稀にしか見ることのない大雪、しんしんと。


深雪御伽


ケロロ小隊は視界が悪い雪山の頂を目指して登って行く。

マゾ赤ダルマ以外誰がこんなこと好き好んでやんだよ、

毒づく声を先頭のギロロに一睨みされて、クルルは黙って厚い防寒服に顔を埋めた。

遅れをとっていたケロロが深い雪を蹴りながら、最後尾のクルルに追い付き、長く息をつく。

さぶい、疲れたであります、と小声でぼやいて歩くこと数分。
袖を引かれてクルルが振り返ると、ケロロが耳に口を寄せてきた。

「抜け出しちゃおうよ、クルル」

更に深くなってきた足元の雪に集中している隊員達を一瞥し、クルルは白い息を吐き出しながら静かに頷いた。

列を外れて少し歩いた所に手頃な洞窟を見つけ、二人は暖を採ることにした。

「いやー偶然!つっかれたー」

「…偶然?」

「ん、休む場所あって良かったでありますな」

「………ヘエ?」

クルルがじっとケロロを見詰めるとケロロは何々?と呟いてどぎまぎする。

「……いや、」

たっぷり意味深な間を持たせてから目を逸らし、クルルは焚火の用意をした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ