本棚

□不意に愛を
1ページ/5ページ

答えなど期待するものじゃない、解ってはいた筈なのに


不意に愛を


「クルルは私のこと、どう思っているんだ?」

「…あ?」

一瞬の間が空いてから何が、と笑って聞き返されると思わず言葉に詰まった。

ただ話題も無かったから、適当な質問をしたかっただけなのにふと零れたのは本音であった。

「どう…思ってる、ねえ?」

クルルはガルルの腹の底を探るような眼で窺う。

平静を装う。綺麗な顔は眉一つ動かさない。

「ククッ、…何緊張してんスか?」

「……フ、」

貴方はいつも鋭い。私は時折、困ってしまう。
今は上手く笑えているのだろうか…?

「……アンタは」

クルルが軽く私を見上げる。その眼はいつだって一片の嘘もなくて、虚構の世界で満ちていた。

「俺のこと、どう思ってんスか?」

試すでもなく、誤魔化すでもなくただ問い返す貴方は酷い人だと思う。

「…言ったら厭うくせに」

「まあな。」

「貴方を、愛している。」

「……ぅわ、痛すぎて痺れそう」

「ほら…だから言っただろう?」

笑いながら貴方から眼を逸らす。
そう言う貴方の唇に私の方が簡単に痺れるのを知っているくせに。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ