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□紅い月
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月が凄え紅くて思わず、
自嘲。


紅い月


「どうした?」

背後から掛けられた声に振り向く。

「…どうした?」

自分は余程変な顔をしてたのだろうか?
先輩の声に真剣な音が含まれた。

「先輩、月…見えるかい?」

狭いテントの入口を押し上げて奥のギロロに促す。

ギロロは素肌のままの彼の背を肌掛けで包むついでに、夜空を覗いた。

星々を隠す程、煌々と照る月。

「紅い…」

「怖くねぇかい?」

ギロロの胸に背を預けて、入口を落とす。

「怖い?何がだ?」

「紅いところ。」

「………。」

「寒くなってきたッスねぇ」

ギロロの手を首に回させ、すっぽり腕の中に納まる。

「…紅いのが怖いのか?」

「ん。」

「変な奴だな。
…原因は、黄砂じゃなかったか?気にかけることはない」

首を傾げてクルルは息を吐いた。

「だから怖いんだろ」

呟いて更に体を沈める。
布越しにぴたりと密着する体温。
それをしかと受け止める逞しい胸板と腕に、静かに焦燥を煽られる。

「…お前は分からん。」

「イヤン、カラダの隅々まで知ってるくせに〜?」

「全然足りない。」
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