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□よろしく、卑怯者。
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まったく、性質が悪い。
自覚があるのかないのか…
よろしく、卑怯者。
ある日、周囲から犬猿の仲と謳われるアイツが擦り寄って来た。
最近はこの奇行にも幾分慣れてきた、などと思える自分が怖い。
「…何の用だ、暑い」
「暑苦しいのはオッサンの方だろ〜?
今、暇かい?」
確かに寄せられた肌の温度から見れば、暑苦しい、は俺かも知れないが、寄って来たのはお前だろうが。
「これが暇に見えるか?」
クルルが俺をまじまじと上から下まで観察してくる。はん、と憐れむような笑みに鼻を鳴らして
「相変わらずそれしかやることねぇのかよ。暇で死にそうだねェ、オッサン?」
兵器を丁寧に磨き上げる右手に、奴の白い手が重ねられる。
ドキリ、
鳴る心臓に眩暈がしそうだ。警告と、僅かな期待の心音。
馬鹿げた彼と、頭の悪い自らに呆れて、溜息を吐き出した。
「暇じゃ、ない。退け。」
「ふぅん。…手、止まってるぜェ、先輩?」
「…………五月蝿い!というかお前が手を出してくるから…、」
重ねられた手首を取り、思わず荒らげた声。
しまった、と思った。
「相変わらずだねぇ…、つまんね」