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□Worst Kiss・LEVEL100
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奴には常識なんか、全く、ほんの一欠片も通用しない。
そう思い知ったのは、何を隠そう初めて目が合った瞬間だった。


Worst Kiss・LEVEL100


約七年前、俺が上等兵に上がったばかりの頃のことだ。
ケロン軍の上層部の方でも新しい人事が在り、兄・ガルルも准尉と言う役職を与えられた。(実際は、以前から上に来るよう頼まれており、結構な間渋っていたようだ。)

しかし、新しい『上』の生活とは大変なものらしく、珍しくガルルが家に忘れ物をしていった。
その茶封筒を届けに行ったが運の尽き、だなんて知る由もないだろう?
ああ、思い出すだけで頭痛がする…。

本部の受付に渡すだけ、の予定だったが、俺がガルルの弟だと知ると「人手が今少なくて、手を離せる者がいないんですよ〜」、とガルルが居るであろう部屋を早口で説明された。

上等兵、身内と言えど易々と幹部のいる奥に入れてしまう対応…、弛んでいるな。

などと評しながら人気のない廊下に差し掛かると、苦しげな声が聞こえた気がした。

……何だ?

辺りを見回すと、トイレがあって、声の発信源はそこのようだった。

通り過ぎようと思ったが、また小さく呻き声が聞こえて。
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