本棚
□真譚・ニンギョヒメ
1ページ/10ページ
君に焦がれて焦がれてどうしようもなくて。
どうしようもないまま、ココへ辿り着いたんだ。
真譚・ニンギョヒメ
王子・ギロロが目を覚ましたのは、浜辺で町娘・ドロロに発見されてから丸一日経過してからのことだった。
瞼を上げると、質素な木目の天井が目に入った。
「ここは…?」
呟くと、突然青が視界に入り込んで来た。
驚く俺の顔を覗いて頷くのは、青い髪、蒼い瞳を持った美しい娘。
「……お前が、助けてくれたのか?」
娘は首を横に振った。
近くのスケッチブックとペンを取り、何かを書いているようだ。
『拙者はドロロ。
助けたと言われるようなことはしてないでござるよ』
こちらに向けられた紙にはそう流麗な字で記してあった。
「…ドロロ。もしかして、喋れないのか…?」
尋ねるとドロロは小さく頷く。
「…そうか。いや、すまない。
俺はギロロ。
とりあえず、礼を言う。」
律儀に頭を下げるギロロに、再度ペンを執るドロロ。
『だから、お礼を言われるようなことなんて何もしてないから。
気にしないで。』
そう紙上で告げるドロロの笑顔は、花のように可憐で。
知らずギロロも緊張が緩んだ。