本棚・弐

□クライスト・サージェント
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死ぬのは怖くない、なんて贅沢な言い分聞きたくないでありますよ。


クライスト・サージェント


どっと胸を踏み付けると中年の男は呻きと共に少量の血を吐いた。

「『ピガル星の弾丸大帝』なんて大層なあだ名、こ〜んな若造一人に敵わないなら捨てるが吉でありますよ」

「…っぐぅ…、勝手に……ま、わりが、っ呼んで、ただけだ…!」

「あっそ?まあ弱くはなかったでありますからなぁ」

相手が悪かったね、と不敵に笑んでその顔面を足蹴にする。
鼻が曲がる感触が靴底から伝わって、男の声が裏返るのを聞く。

「や、大丈夫でありますか?殺さないから心配は不要であります」

戦場で名のある男を捕虜として連れ帰れば、軍の中で株が上がるというもの。
周りに認められる光景を想像して、ケロロは反り血に汚れていた頬を拭って笑った。

「……殺せ…!」

足の下で吐き出された呟きに、ひくりと笑いが引き攣る。
使い物にならなくなった両腕を投げ出したままの男はまた、殺せ、と血塗れの歯を剥き出しにした。

「…ハァ?わっかんないでありますなぁ…」

ケロロが足を退けて、男の顔を覗き込む。

「家族は?生きたくない訳?」
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