本棚・弐
□向日葵、咲く憂鬱
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雪のちらつく寒い午後、此処の向日葵は人工の光しか知らないけれど。
向日葵、咲く憂鬱
「ふう…、」
ドロロが額を流れる汗を拭う。
地下基地内のドロロ専用菜園は冬の今、一様に背の高く伸びた向日葵畑になっていた。
太陽を模した光源に一心に向かう花たちを喜ばしく思える反面、ふと陰りを覚える。
眩しければ眩しい程、地面に広がる影は暗く濃い。
ふとそちらに目が向く自分は醜いのだと思った。
「…クルル殿は、如何様に見るでござろうか?」
小隊一ひねくれた男を思い出した。
彼の闇は純粋過ぎて己のソレとはまた質が違う。
別に彼の言い分で自分を弁護しようなんてことじゃなく、ただ興味深い意見を聞かせてくれそうだと思って。
拙者は彼をラボから連れ出すことにした。
「あちー…」
「でも、よく育ったでござろう?」
「目ぇ痛…」
昼でも薄暗かったラボのせいでしぱしぱする目頭を押さえるクルル。
「……どう見る、クルル殿?」
「あ?…ああ、」
目を上げて。
「綺麗だなぁ…超ぉクール」
驚いた。
クルルにしてはあまりに素直な意見に驚いて彼を見ると、彼は向日葵を見ていなかった。