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□収穫
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「…何故おまえがここに居る?」
暑苦しいヤロー共を写す画面の前、3D仕立の絵のように、ご機嫌なそいつはオレのお袋と談笑していた。
「はっはっはっ…清麿。これは再放送だぞ。」
オレが見せつける不穏な空気に気付いた風もなく返すヤローは、黙って立ってりゃイイ男な面をヘラヘラと緩めナンパな話題をお袋に向ける。
ムッとする。
「おまえがお袋と、差し向かいで呑んでる理由を知りたかったんだがな?」
コイツの軽薄さは、いつもオレの神経を逆撫でする。
「お年賀…に来たんだ。」
魔物ですら恐れる鬼の形相…そんな表情をしていたのかもしれない。
気圧されたかのように引きつった頬は血の気が薄い。
「あなたが帰るまで、くつろいでいただいてたのよ。…お持たせでだけど。」
オレとフォルゴレの間に割って入ったお袋は、ほんのりと染めた頬と、やわらかな口調でとろりと話す。
「お年賀だぁ?」
素頓狂な声だと自分でも思う。そんな単語、今時の若いもんは絶対に使わねぇ…つーか知りもしねぇだろ?
「どうしてもおまえにプレゼントしたかったんだ。」
満面の笑顔。
不穏なざわめきが胸を占め、まとわりつく空気が変わる。
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