本文

□La raccolta
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「どうしてもおまえにプレゼントしたかったんだ。」
満面の笑顔で子供のように得意げに言う。
「飲酒解禁は何才だ?」
聞き返されてフォルゴレは、やっと自分の不手際を知る。
「あ…っと…二十歳?」
酒が入っていたのだろう紙の筒を両手で弄びながら、小さな声で呟く。
「正解だ。で?オレは?」
「16才…デス。」
地を這うかの如く畳み掛けてくる声に、六尺豊かな美丈夫がその身を縮こまらせて返す。
「判ってりゃあ良い。」
絡めた追及の手が、不意に退く。
肩透かしを食らった形のフォルゴレは、虚脱した表情で深い彩りの瞳をまじまじと見つめた。
凛とした。往時の若武者を思わせる表情に引き込まれるように、その容貌に見入る。
延ばしかけた腕を抑える。
行き場をなくした指を、所在無げに遊ばせる。
美しい、そして何より愛しいと思う。



“魔界の本の使い手”という大きな繋がりはなくしても、まだ残る接点は消えない。
たとえ抱き締めることさえ叶わぬひとだとしても…。
それが人生最大の収穫だったと信じるから…。

Fine.
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