小説
□負けん気
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☆負けん気☆
「キラ!!」
アスランの声が月の幼年学校の教室に響いた。
「ア、アスラン・・・」
キラのか細い声がすごい震えてアスランに返ってくる。
「何してるんだ!早く降りて来い!!!」
アスランの声は心配気にキラに向かって叫ばれている。当の本人のキラは今ロッカーの上から登ったのか直ぐ隣のその掃除用具入れの上に居た。本当に・・・何をやっているのか?と、アスランは吃驚して声をあげたのだが・・・どうにも、キラの様子が可笑しいのだ。
「ど、どうしよぅ・・・降りれないよぉ」
すでにキラは泣いている。自分ではかろうじて我慢しているのだろうが・・・もぅアレは完全に泣いてしまっているだろう。それを見ていたほかのクラスメイト達はわぁわぁと五月蝿く回りに集まってきている。ナチュラルの子供たちは
「コーディネーターなんだから平気だろ〜?」
と、なんともむごい事を言ってくる。子供のうちから全てをこなす事なんで出来るはずはないのに・・・アスランがきつく睨めばそいつは直ぐに黙り込んだ。
「そこで待ってろ、俺が側に行くから」
アスランがキラに慌てて心配げに声をかけて、アスラン自身もキラの側に行こうとする。女子たちは口々にその様子を見て騒ぎ始めた。
「アスラン君!!」
「危ないわよ!」
「先生が来るまで待ってましょうよ」
「そうよ、危ないわ」
「キラ君のためにそこまでする必要ないじゃない」
実はアスラン。クラスの女子からかなり人気がある・・・そんなもんだからいつも一緒に居るキラという存在がかなり邪魔でもあったのだ。だからかそういうことを言ってくる。しかし、アスラン全くその声に耳を貸そうとしないで先ずはロッカーの上に這い上がる。
「アスランっっ危ないよ!!」
その女子達の声を聞いてか、アスランがロッカーの上に着たその瞬間にキラはやめてよ、降りてよ危ないよ!僕の為にそこまでしないでよ!!と、叫んでいた。
「お前の方が確実に危ない!!」
しかし、そのキラの言い分にはアスランがそのまま返した。確かに・・・アスランの言葉通りなのだ。キラは掃除用具入れの上で怖いのか・・・座っているというのに上半身がゆらゆらと揺れていたし・・・なんか、今にも落ちそうだ。
そのアスランの声に確かに、キラのほうが危ない・・・と、クラスメイトは判断したのかアスランの言葉にうんうん!と、力強く頷いてしまっている。それはさっきまでアスランを止めようとしていた女子たちまで。