物置部屋
□引き出しの猫
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「アリス、アリス」
くぐもった声が私の名前を呼んだ。
「なーにチェシャ猫?」
私は机の引き出しの中に布にぐるぐるに巻いてある生首へと返事を返した。よく生首だけて生きられるなぁ…と、つくづく思う。
「ここは苦しいよ、アリス」
どうやら文句らしい…私はキョロキョロと自分の部屋の前を見て、叔父さんやおばあちゃんがいないのを確かめてからチェシャ猫の首を引き出しから取り出した。
「だってチェシャ猫。あなた首だけだと怪しいんだもの」
私はチェシャ猫の首を膝の上に乗せて話をした。やっぱり不満らしく、いつもとちょっと違う顔をしてる。
「なら身体があればいいね」
「そうねぇ、身体があれば…」
あれ?ちょっと待ってよ私!身体があってもチェシャ猫はどこに居ればいいのよ?!更に居る場所に困らないかしらっ!
「ま、待ってよチェシャ猫」
「どうしたんだいアリス?」
猫は至って不思議そうな顔をしている。
「あのねっ身体があってもあなたを誰かに見られたら困るわ」
慌てて私がそう言うとチェシャ猫は不思議そうに口の形を歪めて笑った。