07/12の日記

19:44
恋禁-Regnat non regitur qui nihil nis i quod vult facit
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私はアルファ、王直属の執事部隊の執事長である。
私の仕事は、彼女の身辺の世話から簡単な仕事の影武者、そして彼の眼になることである。
彼女は私の瞳に、地獄さえ見渡せる力を与えた。
彼はその代わりに、王に程近い力を分け与えた。
王は言った。
「力の代償は業で賄わなければならない。」
私を闇から救った彼女は、私の闇を払拭しただけでなく、その業から解き放った。
私だけでない、この組織のすべてを、彼は己の力とするため、それ以上の業を背負っているのだ。
王は言った。
「私の業はそれでも少ないくらいよ。」
伏せた瞼の、はためくまつ毛が楽しげに笑った。
彼女は自ら背負った業に、押し潰されて死ぬだろう。
これは、与えられた瞳が写した遠くない将来の話だ。
しかし、彼はその未来さえ次々と塗り替えてゆく。
私の目さえ追い付かぬ早さで。
常人たちはそれが変わっていくことにさえ気づかないだろう。
それはある意味、自ら彼女の懐に入ったものが、己から大きな業が消え去るのに気づいていない事に似ていた。

(彼は王であり、望むことだけを行う臣民ではない)

「アルファ、次の仕事へ移りましょう。」
彼女のコールが聞こえる。
「御意」
今日も彼は懐の人の業を背負い、そして淡々と塗り替えてゆく。
真に全てから解き放たれる日を信じて。

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