02/18の日記

23:05
咬奈×傷多
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「咬奈先輩、本当に船上勤務に移るんですか?」
後輩の傷多が重そうな瞼を必死に開けて、俺にそう聞いた。
時刻は深夜二時。普段ならば、俺も傷多もすでにこの寮で寝ている時間だ。
「ああ、あそこの方が、彼に近いからな。」
俺は、いつにもなくそっけない素振りで傷多に言った。
「むううー…」
傷多は不貞腐れたような顔で、二人部屋の寮の隅に蹲っていた。
俺の勤める場所はとある大きな組織。
彼女のために、来る世界制服の日の下拵えをする。俺と傷多はその組織の支部で、給仕という下っ端の世話役をやっている。
そして船上勤務とは、彼の住まうシャンバラ号のクルーになると言うことだ。
支部の給仕より数段上の船上勤務、前々から夢はあそこで、彼女の世話をすることだった。
「傷多、そこの制服取ってくれ。」
今は、明日近くの港に寄港するシャンバラに乗り込むための荷造りの真っ最中。
「…咬奈さんが行くなら、俺も受ければよかった。」
傷多が鞄に物を詰め込む俺の横に座る。
ずっと昔から、俺と傷多は同じ仕事仲間で、ここ数年は顔を合わせない日はない。
それこそアカデミーからの友人、いや兄弟のように育ってきた。
「お前が受かって、俺が落ちてたんじゃ、俺の面子が立たねぇだろ。」
そう言えば、傷多は頬を膨らませ、子供のように愚図った。
エメラルドグリーンの瞳を潤ませる、俺より体格のいいガキは、支部を訪れる者の中ではとても評判がいい。
「俺っ…咬奈さんと離れ離れになるの嫌だよぉー…」
とくに子供の頃から変わらない、人懐っこさ。
「ったく…また今度受ければいいだろ?」
ルックスも、焦げた肌の色に金の髪という、いかにも好青年という顔立ち。背も俺より高い。
俺は、体育座りでうつ向いた傷多の猫っ毛をぐじゃぐじゃに撫でる。
まるで大型犬を慰めるような感覚を覚えながら、傷多を眺めた。
「うー…俺、咬奈さん居ないと、何もできないよ…」
うるうるとした瞳と、目があった。
(…いつの間にこんなになったんだか…)
一瞬だけ、子供の頃に戻ったような錯覚が走り、すぐ現実へ帰ってくる。
「むぅぅ…咬奈にいー…っ」
気が付けば、傷多は俺に襲いかかってくる。
昔の愛称を突然言われて戸惑う暇もなく、俺は傷多の猛烈なタックルにより、床と傷多にスクラップされた。
本当に大型犬そのものと、体当たりしているようだった。
「…ぼく、咬奈にいと一緒がいーよ。」
確かに傷多は、仕事もできるし客にも好かれるだろう。俺もアシスタントとして雇ってやりたいが、それを決めるのは俺じゃない。
「…餓鬼め」
「ぶうぅー…っ!!」
じんじんする頭を擦りながら起き上がる。
傷多のヤツ、眠たくてなにが何だか解ってねぇな。
「…俺ぇ…仕事、人より早く、覚えるよ…?…他にも…えっと…んと…」
今にも眠りそうな顔で、指折り数える傷多をあえて突っ込むことはせず、屈んだまま見ていた。
「…ひっく…咬奈にぃっ…ぼく、置いて行かないれよぉ…っ」
(あー…ったく…コイツ…)
@襲う
A慰める
B抱き締める

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