Lovers Kingdom
□Night and
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冷めた私が体を抜けて私を見ていた。
私を見ているソレは、どこまでも冷めている。
「…胡散臭い」
一言で吐き捨てると、シューリッヒまで血液の廻る体を抜けた。
『迫真の演技じゃねえか、いつかのハムレットみたいで、狂ってたぜ。』
満足そうでとても悪い笑顔だ。でも不思議と嫌いじゃない、ほんの数分前はあんなに嫌いだったのに。
でも
「…悪いやつは嫌いじゃない。」
『?今なんつった?』
「おやすみ、と言った。一緒に寝るか?」
そう彼の前髪を掻き揚げた、綺麗に二つそろった眼球、長い睫毛、弓形にしなった、赤い唇。
『いいな、俺も今同じ事考えてた。』
初めて悪魔の胸に抱かれ、醜い世の中を語り明かした。
向かい合いながら、抱き合いながら、肌を近づけていた。
彼の体は人からすれば異様なほどに人らしく、温かいし呼吸はするし、心臓だって動いた。
肩透かしなぐらい彼は人のようで、騙されたような気分に陥った、しかしそれ故にこの孤独に耐えかねているのだと、彼は泣いた。
『同じ体なんだぜ?それなのに死ねないなんて、ただの痛みでしかないだろ』
同じ体。だなんて、悪魔の言うことは何でも胡散臭く聞こえてしまう。
「空を飛ぶ人間なんて聞いたことないし、具現化したり透過したりする人間も見たことない。」
『そりゃ悪魔だし…』
シューリッヒの顔が渋そうに歪んだ。そう言われたら言い返せないようだ。
私は彼の胸に頭を埋めて、瞳を閉じた。私の声は、祈りのように二人の体の間に響く。
「…大丈夫だよシューリッヒ、悪魔だって私はシューリッヒが好きだから。シューリッヒが寂しいって言うなら、私も生きるから。シューリッヒが寂しくないように、私が生きてあげるから。」
ぎゅううと私を抱き締めて、シューリッヒは弱音を吐く。
『人間の癖に…ばっかじゃねぇの、何でそんなこと言えるんだ?俺のこと、愛してもいないんだろ?』
「愛してるよ、まるで自分を見るように。」
まるで、君が泣くように。