Lovers Kingdom

□Night and
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「シューリッヒ、私はお前を愛してる。お前が悪魔だというなら、私はその生け贄に喜んで身を捧げるよ。」
『俺もだ人間。しかし俺はお前を愛するための名を知らぬ、どうかお前の名を。しかるべき生け贄の名を教えて使わせ。』

悲劇じみた芝居を、私は彼と演じていた。言葉と声だけが、指先でスッテップを踏んで、手の平の上を踊り回った。そして私は、初めてにしてはしっくりきすぎる展開に、彼に好意を寄せた。

「生け贄に名など必要か?私は名で現せるほどこの世に未練はない。」
『ならばこの俺は、お前への愛をどう記せばよいのか。』

そして物語はクライマックスへと直走る、人間は自らの肉を飢えに苦しむ悪魔に捧げ、悪魔はその牙を愛する人間の血に濡らし、涙とともに解けて消えることになる。

「私への愛など、食への執着程度で十分です。あなたを召喚したときに、私は確信していました。私がお前を愛すこと、お前が私を愛すこと、お前が私を喰らうこと。すべてわかった上でこのような戯言を吐く私を、許さないで。そのまま心に、留めておいて。」
『嗚呼、嗚呼!悪魔である俺を許せ、お前を喰さなければない俺を許せ。もし人としてこの世に生を受けたなら、俺はお前を、本当の形で愛してみせるのに。お前を愛せない俺を許せ、お前に不誠実だった俺を許せ。』
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