Lovers Kingdom
□Night and
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一つ 私はそれが大嫌いだった。
私は、世界が大嫌いだった。
世界には綺麗事が利かない事が多い。
世界には私を知るものが少ない。
そんな小さくて大きなセカイ。
そんなの、楽しくも何ともないじゃないか。
『そうだなぁ』
響き渡るその声は、正しく悪魔。
『楽しくも何ともないなぁ』
鴉のような黒い羽、長い前髪。覗くハニーゴールドの瞳。影のように長い手足。
自分の目を疑うが、最早幻覚であろうと構わなかった。
「…でしょ?」『ああ!』
口をぐにっと歪ませて笑う。
笑い方は人それぞれだが、あまり好きになれない。
「…」『?…あぁ俺、悪魔。』
ばさり
大きな黒い羽を広げ、小さな夜に黒い花を咲かせたように含み笑う。
そして悪魔は、酷く嫌味な自己紹介をした。
『人間のお嬢さん、俺は今世紀最強・最悪の悪魔、シューリッヒ・ベルゼネフ。今宵は貴女の為に舞い降りました…。』
不気味な笑顔のまま、悪魔は恭しく礼をした。
「私のため…ね、嘘ばっかり。悪魔のくせに。」
冷めた私は、しれっとそっぽを向いた。
『おいおい!…ったくなんだよ…折角俺様が来てやったのによ…』
一瞬の軽い激情を悪魔は見せて、私の目の前に立ちふさがった。
「人は足りてるし、今のところ悪魔の助けも要らない。悪いけど用件は後にして。」
いま、あなたと同じ世界に行こうと思ったんだから。心の中で呟いた。
『だったら、一度死んだと思って俺の口車に乗ってみないか?』
私は、また一歩踏み出した。
『ちょ、おまえ!!ここまで聞く耳持たないヤツも初めてだ…。なぁ待ってくれよ!!』
悪魔はなぜか必死だった。羽と羽が擦れあい、カサカサと音を発てた。
「何でそんなに必死なの?」
『…俺はこれ以上の暇は許せねぇんだよ…何世紀も、何世紀も、それりゃあもう飽きるぐらいに生きてんだ…もう地獄も天国も同じだ。そんな所に居るくらいならまだ、淀んだ川に身を投げた方がいいじゃないか。』
怠惰の悪魔と言えど、快楽主義に違いはねぇからな。と笑った彼に、私は感情を緩めた。
こいつなら、私を理解してくれるかも…理解とまでは行かなくとも、私の話を聞いてくれるのかな。
『なあ人間、お前は俺に全てを話してくれるか?』
この孤独な悪魔なら。