Silent Kingdom

□カオス空論
1ページ/11ページ

ボルドーという大男は、私の一撃に平伏した。
まぁ、股間を蹴り上げるのは常識として考えられない事なんだけど。
私にしてみれば、襲われたらとりあえずそうする。

「りか!!」

ジエチルさんが部屋に入って来て、心配そうに私を見ていた。

この部屋に不釣合いではあるが、先ほどより随分明るくなった雰囲気の部屋。
蓄音機はいつの間にか止まっており、鏡がゆっくりと元の位置まで下がってきた。

「すごいな、最近の若い子は!」

隠し扉を使い、先ほどの銀縁の男が部屋に戻ってきた。

「いや、一瞬だったね。ある意味で。
もしかしたら、ボルドーの一撃で終り。
もしくは粘って長引いてボルドーの勝利かと思ったのだが。
その全てを裏切るとは。」

満面の笑み。
相変わらずボディーガードは仏頂面だが、この雰囲気においては、それが上手く隠れている。

「オヤジ…勘弁してくれよ。」

大男、ボルドーが銀縁眼鏡に話しかける。
相当辛そうだ、まだ多少ふらついている。

「ボルドー、まぁいいだろう。
新米だ、お前が世話をしてやってくれ。」

「俺が、ですか?」

驚いた表情を見せるボルドー、さっき自分の股間を蹴り上げた人間の教育係には、多分私もなりたくない。

「あぁ、教育係やってくれるだろう?」

「まぁ…いいですが、ジエチルは?」

「俺は、後ろから援護するよ。
最近仕事が立て込んでいるから、彼女に付きっ切りで居るわけにはいかなくて。」

セカンド・・・が何かは分からなかったが、ジエチルがこれからずっと一緒に居てくれるわけではないようだ。

「いいかなリゼ?」

「?リゼ?」

「あぁ、君の名前だよ、君は強い、だからそれに見合ったネーミングクラウンを授けなくてはね。
素敵だろう?
まぁ、由来はジエチルに聞いてくれ。」

「・・・はぁ…それじゃあリゼはボルドーさんと一緒にいればいいんですね?」

「そう言うことだ。
よろしく、リゼ。」

「はい!」

銀縁眼鏡の男はまた隠し扉を使い、部屋の奥に消えた。

数秒の沈黙の後、私はジエチルを見る。

「ところでジエチルさん、さっきのリゼってどういう意味なんですか?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ