Lovers Kingdom

□Night and
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―思いの丈―

私は、逃げていた。15年間。ずっとずっと。何に?ではなく。ありもしない、敵から。
敵は、自分だったから。
でももう、いいの。今日はこれで終わるの。今日までの今日は。
今日までの今日は今日でおしまい。
私は変わるんだ。
グロテスクでファンタスティックで、ちょっと古典的な、私の理想を。
小夜曲のように安らかに、奏でていこうじゃないか。

『奏でようじゃないの、なぁ?相棒。』
「そうだね、シューリッヒ。」

私が、圧迫感に任せて自らを腐らせたのは、
マッドな悪魔に出会ったのがきっかけだった。
出会った悪魔は、そう。狂っていた。
鴉のような黒い羽、長い前髪。覗くハニーゴールドの瞳。衣装も黒、装飾も黒、時折、紫。

『早く綺麗事の世界ができれば良いのにな。』

乾きは、シューリッヒが居れば十分潤った。
それまで、時折足りなかった、痛かった、苦しかった、身動きが取れなかったのは、束縛感とは違う、拘束感だ。漠然とした、その痛みに、私は啼いた。
狭い、狭いと、この大陸の形をした箱を人間の姿をした私は、叩いた。
そして、乾ききった所を、シューリッヒはふらりとやって来て、潤し、かき回し、帰っていった。
痛い、痛いと、喚き散らすのに飽きた私は。
明日を壊す事に決めた。

『お前の痛みにつけ込む俺を、お前は嫌いにならないか?』
「不毛な質問。大嫌いよ、でも大好きなの。人は大嫌いよりも、大好きが勝っていれば大好きで居られるのよ。」

あたしに、最初にできる事は何かしら。心で考えて、頭で答えていた。

「殺す事ね。」『痛いな、相変わらずだ。』

汚れきったこの心、汚れきった考え、腐りきったこの脳味噌は、背徳などと関係なく。人の死を望んだ。

『落ちたな。』
「人の負の底辺で産まれ育ったような悪魔が、人の正の頂点で生まれた私に言える事なんてないんじゃない?」

気丈に、私は笑う。
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